4月8日の入学式で校長が話された新入生に向けての式辞をご紹介します。

『学校長式辞』

工学院大学附属中学・高等学校 校長 平方邦行

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新入生に皆さま、保護者の皆さま、ご入学おめでとうございます。
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昨年はこの場で「出会いの意味」についてお話しましたが、今年は「新しい出会い」について皆さんと考えてみたいと思います。特に「新しい学びとの出会い」についてお話します。
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今まで皆さんはどんな授業を受けてきたでしょうか?多くの場合は「教師が一方的に生徒に答えを伝えていく」という講義形式による一方通行型の授業だったと思います。これは20世紀型の授業といわれています。
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しかし今、世界は大きく変わろうとしていますし、日本の教育も大きく変わろうとしています。変わる部分は授業の進め方です。工学院でもそのことを念頭に置いて研修研究を重ねています。今年はそれを加速させたいと思っています。皆さんは「新しい学びとの出会い」が今日から始まります。
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それはどのような「学び」でしょう。従来の一方通行型の授業に対して、双方向型の授業による「学び」です。PIL(Peer Instruction Lecture)やPBL(Project Based Learning)と呼ばれるディスカッションや対話を中心とした授業がこれに当たります。世界の教育現場での多くの授業はこういうスタイルになっています。これが21世紀型の授業です。
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今は決まった答えのない社会が到来しています。そうした時代を生き抜くための訓練が授業でも必要です。そうしなければ、いざそういう場面に遭遇した時に問題解決ができません。
21世紀型の授業では、生徒たちが答えを見つけ、問題点を発見し、自ら問いを立ち上げ、グループでディスカッションし、コミュニケーションしながら解答をみんなで共有していきます。このように知を再構築し、考えるプロセスを大切にするというのが、世界で行われている授業の在り方です。日本もそういう方向に大きく舵を切ろうとしています。工学院では他の学校に先駆けて、そういう研究を進めています。
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このように日本の教育は大きく変わろうとしています。
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日本だけの基準ではだめ、ローカルスタンダードでは世界に通用しないということです。ですから「グローバルスタンダード」という言葉が生まれてきています。今までは欧米のスタンダードがグローバルスタンダードととらえられていましたが、最近ではハイブリッドスタンダードといわれ、アジア・アフリカ・オセアニアなどそれぞれのスタンダードを包括してグローバルスタンダードといわれるようになりつつあります。
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次の言葉(式辞の中で放映されたコメントの内容)はある学校がイギリスの学校に留学の受け入れをお願いした時に、相手(イギリスの学校)の先生から言われた言葉です。

『第1に授業で貢献する生徒を求めています。先生の話をノートに写せばいい国もあるでしょう。しかし、ここ英国では違うのです。全ての生徒が授業に貢献することを望みます。貢献しない生徒は、自国ではよい生徒であっても、英国では、そうとは言えないのです。
第2に、批判にかかわることなのですが、何についても疑問を持つことが必要なのです。先生が正しくないと思う時には、「本当に正しいのですか?」と訊く必要があるのです。~~~』

 皆さんの授業はどうでしょうか。教室で静かに聞いていればいいと思っていませんか。多くの双方向型の授業の中では、生徒がどうやって授業に貢献していくのかが問われます。これはイギリスのことだけではありません。ですから皆さんは授業に貢献しなければいけない。そしてただ素直に受け入れるだけではなくて、「本当にこれは正しいのだろうか」という風に思ったときには、遠慮なく質問をしていく。そして議論をしていく、というのが大切なのです。
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このように世界の教育は進化を続けています。それは社会が速いテンポで変わっているからです。
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次の画像を見てください。
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左側は大学の講義の様子です。右側はパソコンの前に女の子が座っています。この女の子はパソコンで授業受けているのです。「世界が一つの教室になる日」というタイトルがついています。
いま世界のトップ大学は授業をweb上でどんどん公開しています。授業料を払わなくても見ることができます。それを見た人がレポートを書いたり試験を受けたりしています。そうして世界中で思わぬ能力が発見されています。MITから合格通知が届いたモンゴルの16歳の少年や、スタンフォード大学の「物理」を最優秀の成績で修了した12歳のパキスタンの少女はその一例です。
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こういうことが世界中で起こっています。日本のことではないと皆さんは思いますか?京都大学も同じようなことをこの4月から始めました。(式辞の中で放映された映像はこちらから)
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このように世界中の教育の在り方は大きく変わろうとしています。そのことをぜひ覚えておいてください。
今までは偏差値による差別化がおこなわれていました。先ほどの少年や少女は何があったから、MITやスタンフォードの授業を聞くことができたのか。英語ができなかったら彼らにあのような道は開けなかったはずです。今は英語による差別化がものすごい勢いで進んでいるということを自覚せねばなりません。
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皆さんは工学院で3・6年間学び続けます。世界の教育は変わり続けているのだということを覚えていてください。
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「Never stop challenging yourself.」挑戦することをやめたらその時点ですべてが終わってしまう。そのことをぜひ忘れないでください。
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以上式辞といたします。
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